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遺留分の減殺請求と課税 [相続の部屋]

今日は遺留分の減殺請求について、その課税上の問題を考えてみようと思います。

遺留分といえば一昨年の本試験の第一問(問2)で出題されましたが、その時はそこまで掘り下げるとは全く想定していなかったので、全く歯が立ちませんでした。

そんな訳で遺留分には、少し苦い思い出があります。

さて、そもそも遺留分の減殺請求とは何かを把握する必要がありますが、ここでは理解をしている事を前提としてお話しします。

1.遺留分減殺請求と課税

遺留分自体は直接相続税等に影響を与えることはないですが、遺言等により財産を取得した者が申告をした後に、遺留分減殺請求がなされた場合は様々な課税問題が生ずる可能性があります。

例えば、遺留分減殺請求権行使段階、返還、価格弁償段階、法人の場合などが考えられます。 

2.遺留分減殺請求行使権と課税

遺留分減殺請求者は請求権行使により目的物につき所有権を取得することになるので、申告に反映させなければならないことになります。

もう申告が済んでいる場合で請求権者が新たに財産を取得する場合には期限後申告、請求権者自身が既に申告しており、減殺請求により財産が増える場合には修正申告を行うことになります。

他方、減殺請求により財産を減らした者は更正の請求をすることになります。このように両者は表裏の関係になっているので、必ず更正の請求及び修正申告をさせるよりも、当事者間で税負担を調整する余地を残した方が良い。そこで相続税法では更正の請求等をすることができるという規定になっています。

もっとも、減殺請求する背景には当事者間で紛争が生じていることも多い。このような場合には遺留分減殺請求をしている限りにおいては、係争中であっても当該減殺請求の効果を前提として申告等をしなければなりません。

なお、更正の請求は減殺の請求があったことを知った日から4月以内にしなければなりませんが、減殺請求に対して争っている場合には、「当事者間に争いがあって調停が行われたものであるから、調停成立により当事者間で了解点に到達した調停成立の日」を知った日とすべきである判決例もあります。

3.返還・価額弁償

減殺請求権は形成権であるので、請求時点で課税関係に与える反面、実際に返還した時点での課税関係には影響を与えないことになります。ただし、現物返還ではなく価額弁償金を当該遺産の一部を処分して支払った場合は、当該財産の処分が代償分割なのか(この場合は支払者に譲渡所得課税)、それとも価額弁償のために当該財産をあきらめて処分したのか(この場合は、換価分割なので、支払者、請求者双方の持分に応じて譲渡所得課税が行われる)、という問題が生ずる可能性があります。

4.法人への遺贈に対する遺留分減殺請求

法人への遺贈に対する遺留分減殺請求はさらに複雑です。まず、法人に不動産等が遺贈された時点で「みなし譲渡課税」が発生し、被相続人の生存中の値上がり益をここで清算しなければならないからです。その後、遺留分減殺請求がなされると、請求者はその時点で遺留分について相続することになるので、現物が返還されれば「みなし譲渡」もそれだけ縮小することになります。

しかし、法人が当該不動産を返還せずに価額弁償で済ませた場合、どう考えるべきでしょうか?これについて多数の考え方が存在するので、ここでは敢えて触れないで置くことにします。

以上、とりとめもなく書き綴りましたが、更正の請求をできる規定は、未分割の場合、相続人に異動を生じた場合など多数ありますが、遺留分の減殺請求の場合だけは係争が前提のため、それに係る期限後申告、修正申告、更正の請求をきちんと申告して置く必要があると思われます。

余談:遺留分は相続税法の中では重い論点の一つなのでしょうか、遺留分だけをテーマとした実務書が結構出版されています。

遺留分は楽しいテーマでした[るんるん]


コメント(7) 
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コメント 7

コメントの受付は締め切りました
ダヤン

プリンスメロンさん はじめまして。
コメントを書くのは初めてです。
ダヤンと申します。よろしくお願い致します。
実は、隠れファンでした:*:・( ̄∀ ̄)・:*:

今回の「遺留分の減殺請求と課税」勉強になりました。
相続税は奥が深いですね。

相続の部屋でUPされている理論はとても役に立ちます。
こっそりプリントアウトして活用しています。

私も相続税法が最後なのですが、この科目で頑張ろうと思っています。

また、遊びに来ます。
支店の方は毎日見ています(-^□^-)

by ダヤン (2008-03-26 23:09) 

愛読者

プリンスメロンさん ありがとうございました。
①受遺者が申告する時点で、遺留分の減殺請求がまだ申し立てられていなければ、受遺者は遺言どうりに財産を取得したように申告をし、後日なんらかのかたちで課税価額が減少した場合には、更正の請求をするということですね。
②受遺者が申告する時点で、遺留分の減殺請求が申し立てられていれば、受遺者は取得財産を減らされるかたちで何らかの計算を行い申告をし、後日なんらかのかたちで課税価額が増減した場合には、修正申告なり更正の請求をするということですね。
③ところで、相手が申告をするのを拒否したため決定処分がなされた場合も、受遺者は、更正の請求をすることができないのでしょうか?
質問ばかりで申し訳ありません、お時間があればで結構ですので、ご意見をお聞かせ頂ければ幸いです。
by 愛読者 (2008-03-27 00:22) 

プリンスメロン

ダヤンさん、こんばんは

初コメントありがとうございます。
ブログを見ていただくのも有り難いですが、やはりコメントを残して下さるのが一番嬉しいです。

遺留分と言うと、どうしても一昨年の本試験が甦って来ます。しかも今回記事にした『価額弁償金』辺りは、そのとき意味がさっぱり判らず固まってしまった記憶が…

私の理論は、現在一つ一つの規定の理解を中心に行っているので、他規定との繋がりが今一です。これを少しでも早く線で結ぶように試行錯誤を繰り返しているのが現状です。
相続も受験生レベルが高い科目ですが、挫けずに頑張りましょう。
また、気分転換の時にでもいらして下さいネ。
by プリンスメロン (2008-03-27 22:22) 

プリンスメロン

愛読者さん、こんばんは

③の場合は、国通23②において、
納税申告書を提出した者又は決定を受けた者は、その申告等をした者に帰属するものとされたいた所得その他課税物件が他の者に帰属するものとする当該他の者に係る国税の更正又は決定があったときは、その事実が確定した日又は更正等があった日の翌日から2月以内に税務署長に対し更正の請求をすることができるとなっています。
ただ、遺留分の減殺請求に係る申告等については、あくまでも『できる』規定なので、先に決定処分が行われるとは考えにくい気もします。
まあ、仮に決定処分が先に行われても、国通により手当されているという事になります。

by プリンスメロン (2008-03-27 23:22) 

愛読者

プリンスメロンさん ありがとうございました。
私は九州在住ですが、来週は花見のピークになりそうです。
今後とも、楽しくためになるプリンスメロンさんのブログを愛読させて下さい。良かったら、官報合格後も続けて下さい。
by 愛読者 (2008-03-29 14:35) 

グッチィ

プリンスメロンさん はじめましてグッチィと申します。

先日、相続の関係で遺留分減殺請求を実施しました。
具体的には父の遺言により全財産を後家が相続したため減殺請求をし、土地の一部を登記しました。
この際かかる税金は相続税でしょうか? それとも不動産取得税でしょうか? 県税事務所からは過去の裁判判例により遺留分は相続にはあたらないと言われております。(以下の判例のようです)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=25585&hanreiKbn=01

私としては相続できるはずの権利を行使したのであって、この土地の登記は相続だとおもうのですが、やはり県税事務所の言うことが正しいのでしょうか? ちなみに他の県の県税事務所に問い合わせた所、遺留分は相続にあたると回答を得ました。何が正しいのかさっぱりわかりません・・・

色々と調べているときに貴ブログにたどり着きました。もしお分かりになるのでしたら、お教え頂ければ幸いです。
不躾なお願いで申し訳ありませんが、何卒よろしくお願いします。
by グッチィ (2008-05-13 21:03) 

プリンスメロン

グッチィさん、こんばんは

コメント欄では説明しづらいので、今日の記事で回答します。
by プリンスメロン (2008-05-14 22:15) 

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